神様が帰っていった

数日前、私の街では少し遅めの秋祭りをやっていました。夏祭りに比べると盛り上がりがないのですが、それでも子供たちがお神輿を担ぐのでそれなりに盛り上がります。

普段、人酔いが嫌であまり祭り事には顔を出さない私ですが、秋祭りならそれほど人も多くないだろうということで、見に行ってみました。そこで日本文化における神様の正体に触れた気がしたので、今回はそのことを書いていきたいと思います

産業祭を兼ねた私の街の秋祭りは、商店街の端から端までが貸し切られ、明らかに商業イベントの様相を呈しています。元は町外れにある小さな神社の祭りだったそうですが、今となっては商店が主体です。私も、安く野菜が手に入る組合ブースがなければこの祭りには来ていなかったでしょう

そんな中、買い物客だらけの人波を裂き、お神輿を担いだ子供達が商店街へと入ってきます。皆、見向きもしません。がめつい主婦たちは目の前にある白菜の虫食い箇所を探して値切るのに必死です

しかし、祭りが終盤に差し掛かり、お神輿が神社の倉庫へと向かい始めた時、人々の様子が変わりました。哀愁のようなものが漂い始めたのです。ついさっきまでそこにあった不思議な熱気が、急激に冷めていきます。お祭りという非日常が、一気に日常へと戻っていきました

この時私は、これが神様なんだと感じました。人々の中にやんわりと存在し、時に人を盛り上げてくれる不思議な力を、古代の日本人は神として祭り上げたのでしょう。お神輿が神社へ戻ることで熱気を感じられなくなったのは、神様が帰ってしまったからなのです

もちろん、現代科学ではこれを「大勢ので騒ぐことで集団心理によって高揚感を得られる現象」だとしています。それはきっと正しいのでしょう。しかし「自分たちではなく神なる者に盛り上げてもらっていた」とするこの捉え方も、なかなかロマンがあって素敵なのではないでしょうか

これまで私は日本神話や神社に関する文献をいくつか読んできましたが、いくら読んでもあまりよく理解することができませんでした。しかし、今回のことを踏まえて読めばしっくりくるかもしれません。日本人の宗教観は、非常に直感的なのだと感じました

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