クロノグラフ不具合修正奮闘記

四ヶ月ほど前、私はレトロで美しいクロノグラフを手に入れました。アラームとダブルウォッチ、日付表示までついてメルカリでたったの千円! 説明文によれば不具合なし!これは買い!と思って買ったのですが、使用し始めて数日ほど過ぎた頃から、クロノグラフが作動しなくなりました(@_@)  

ある日、カップラーメン食べようと思ってスタートボタンを押したら、針が一向に動かなかったのです。そして代わりに、ボタンを押すたびにエラー音のようなものがします。こうなると説明書が必要なのですが、この時計、絶望的に情報が少ないんですよね、、、オリエント時計がポロクラブと提携して作った時計。これだけ決定的な位置付けがあるにも関わらず、メーカーのページにも一切記載がありません

仕方なく、オリエント時計のホームページに上がっている全てのクロノグラフの説明書を全て見比べて行くことになりました。結果「TA」という型番のものがこれと同型のようでした。これで一件落着!と思いきや、この説明書にはエラー音に関する記載は一切ありませんでした

私よりもっと時計に詳しい人なら察していたかもしれませんが、この時計に使われているムーブメントはSEIKOの7T32というものだと後に私は知ります。しかし、7T32に関するSEIKO側の説明書にも、エラー音に関する記載はありません。万事休す、ということです。私は一旦、この件を諦めることになりました

それからまた数日経ったある暑い日のこと、仕事の合間に何気なくスタートボタンを押してみると、なぜかクロノグラフが復活していました。この時、時計の表面温度が私の体温を上回っていたことを私は覚えています。また、同じ日の夜に涼しい部屋でスタートボタンを押したところ、今度はエラー音が鳴りました。この辺りから、私は温度と不具合の関連性を考えるようになります

加熱が電子機器に不具合をもたらすというのはよくある話ですが、今回は真逆です。加熱することで不具合が修正されているのです。私はこの奇妙な事態に対して、自分で仮説を立てなければなりませんでした

まず疑ったのは電池の適正電力です。金属は加熱されると電気抵抗が増します。コンピュータはこれで電力が足りなくなり、不具合を起こすわけですが、この時計はその逆。つまり間違った電池が入っていて電力が大きすぎるため、加熱されて電気抵抗が上がり、電力が小さくなると不具合が修正されるのではないでしょうか?

そう思って裏蓋を開けてみると、そこにはサイズからして明らかに間違った電池が入っていました。入っていた電池の型はLR41です。これはリチウム電池ですが、この手のアナログ時計に入る電池としては酸化銀電池が多数派です。酸化銀電池の電圧は1.55Vであるのに対し、リチウム電池の電圧は3V、同じボタン電池でも約二倍の差があります。明らかに電圧が過剰です

私はSR927というこの時計の電池ボックスに合うサイズの酸化銀電池を購入し、電池を交換することにしました。さて、これで本当に一件落着、、、と、思っていました。しかし変わりませんでした。その日の夜にスタートボタンを押すと、またエラー音が鳴ったのです。私は再び、不具合の修正を保留とすることになりました

しかし、直接修正を試みる手段こそ失っても、新たな仮説を立てるために分析することは可能です。私はその日から毎日こまめに動作を確認し、その結果と環境条件をまとめ上げることにしました。すると、気温が高くても不具合が発生してしまう日が稀にあることに気づきました。そしてそのような日は、必ず雨が降っていました。ここで、再び新たな仮説が生まれます。湿度が不具合をもたらした可能性です。これが正しければ、暑い日に不具合が修正されることが多かったのも、時計内部に付着した微細な水滴が蒸発したためであったと考えられます。その場合、暑くて湿度の高い日は水滴が蒸発できず、不具合が修正されないことになります

私は試しに、時計の裏蓋を外し、シリカゲルを詰めたジップロックに時計を入れてみることにしました。結果はビンゴです。夜の涼しい時間帯でもクロノグラフが正常に作動するようになりました。しかし、袋から出して腕につけて出かけると、高頻度でまた不具合が出るようになってしまいます。どうやら、汗がいけないようでした。これでは腕時計の意味がありません。何か、外気の湿気が時計内部に届かないようにする対策が必要になります

ここで私は、また別のことを思い出しました。以前裏蓋を外したとき、防水用のOリングがなかったのです。その時は、古い時計だからとあまり深く考えませんでした。しかし、裏蓋を外して再びよく見ると、明らかにOリングをはめるためとしか思えないスペースが裏蓋に刻まれています

私は時計屋に依頼して、この時計に合う型のOリングを探してもらいました。実は、以前この時計屋に修理を依頼しようとしたこともあったのですが、クロノグラフの修理は設備的な問題からメーカーに送らないと厳しいと言われ、メーカーの見積もりが診断だけでも万単位だったため、自分で直す道を選んでいたのです。しかし、Oリングの型探しと取り付けなら、電池交換の度にやることなので街の時計屋でも可能です。特に、私が選んだ時計屋は老舗業者のため、Oリングの品揃えは豊富でした。ホームセンターだったらこれもメーカー送りになっていたかためしれません

Oリングを取り付けてから一ヶ月ほど経過しましたが、この間に再び不具合が起こることはありませんでした。もうこれは完全に直せたと見て良いでしょう。私の、四ヶ月に渡るクロノグラフの不具合との戦いは、ここにようやく幕を閉じたのです

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